約 511,713 件
https://w.atwiki.jp/preciousmemories/pages/1846.html
《高坂 桐乃(076)》 キャラクターカード 使用コスト2/発生コスト2/緑/AP20/DP20 【メイド】/【オタク】 このカードがアプローチに参加した場合、キャラ1枚は、ターン終了時まで+20/-20を得る。 (なにその態度! せっかくこのあたしがここまでしてやったってのに!) 俺の妹がこんなに可愛いわけがないで登場した緑色・【メイド】【オタク】を持つ高坂 桐乃。 アプローチした時にキャラ1枚のAPを20上昇させ、DPを20減少させる効果を持つ。 対象に制限はなく、自分キャラはもちろん相手キャラも対象にできる。 AP上昇効果を生かし自分キャラを強化、DP減少効果をとって相手キャラを弱体化と、2通りの使い方ができる。 このカード自身も対象にでき、AP40・DP0のキャラとなる。 強制効果なので、アプローチするときは注意したい。 カードイラストは描き下ろし。フレーバーは第11話「俺の妹がこんなにメイドなわけがない」での桐乃のセリフ。 収録 俺の妹がこんなに可愛いわけがない 01-076 編集
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1251.html
137 名前:【SS】立冬 1/2[sage] 投稿日:2011/11/08(火) 19 03 28.04 ID X2m+HGjQ0 [1/8] 京介「ただいまーっと」 桐乃「おかえり」 京介「おう。 ……ん?おまえスリッパ変えたか?」 桐乃「うん。 今日は立冬。 冬が訪れてますます寒くなるから、モコモコスリッパに変えた」 京介「そのくじらスリッパあったかそうだよな」 桐乃「そう言うと思って、あんたの分も用意しておいてあげたよ」スッ 京介「おお! ありがとうな」ハキハキ 京介「だいぶあったかいな。人肌のような温かさだ。 まるで今まで誰かが穿いていたみたいだぜ」 桐乃「キモ!あたしがあんたのスリッパを直前まで履いてたみたいに言わないでよね」 京介「だれもそんなこと思っちゃいねえよ。 豊臣秀吉じゃあるまいし……」 桐乃「というか、あたしのスリッパが変わっただけですぐに気がつくだけでもキモいんだけど。 帰ってきてすぐにあたしの全身を嘗め回すように見たってことでしょ?」 京介「ソ、ソンナコトシテナイゼ? 偶然たまたま気づいただけだって」 桐乃「ふ~ん」 京介「それより、冬となればあれだな。 コタツの出番だな」 桐乃「露骨に話題をそらしてきたね。まあ、いいけど。 コタツだけど、今日メルル仕様のコタツ入手してきたから」 京介「メルル仕様のコタツだと……? 相変わらずオタクの感性は理解できんな。 それより、メルル仕様のコタツなんてどうするんだ? リビングじゃ使えねえし、おまえの部屋もオタクだってばれちまうから駄目だろ?」 桐乃「平気。 あんたの部屋に置いといたから。 これならあたしのオタク趣味もばれないし、部屋も狭くならないし問題ないでしょ?」 京介「俺にとっては問題しかないわ!」 桐乃「コタツを自分の部屋で独り占めできるんだからいいでしょ?」 京介「たとえメルル仕様だとしても、コタツ独り占めは魅力的だな」 桐乃「あ。でも、あたしのなんだからあたしも使わせてもらうよ」 京介「独り占めじゃねえし!」 京介(まあ、コタツを理由に桐乃とずっといられるなら文句はねえか) 桐乃「それじゃあ、あんたの部屋に行こっか」パタパタ 京介「ちっ。仕方ねえな」 138 名前:【SS】立冬 2/2[sage] 投稿日:2011/11/08(火) 19 03 51.08 ID X2m+HGjQ0 [2/8] 京介「メルル仕様って聞いたからもっと小さい子供用かと思ったらそうでもないんだな」 桐乃「うん。子供用だからって子供だけで入るわけじゃないでしょ?」 京介「ガラももっと派手かと思ったけど、大人しめだな」 桐乃「これだとちょっと寂しいから、今度御鏡さんにデコってもらうつもり」 京介「全裸の幼女がデカデカと書かれたコタツなんか家に置いといたら親父に殺されるぞ」 桐乃「うっ……じゃあ、小さいのを書いてもらおう」 京介「それじゃあ、コタツに入ってみるか」モゾモゾ 桐乃「あたしもあたしも」モゾモゾ 桐乃「スイッチ入れてないけど、ちょっとだけあったかいね」 京介「二人ではいるとちょっと狭いか?」コツン 桐乃「足伸ばすときには気をつけないとね」コツン 京介「言ってる側から伸ばしてくるなよ。足が絡まるだろうが」コツコツ 桐乃「変に伸ばしてるのはあんたでしょ?」コツコツ? ???「きゃん!」 京介「ん?」 桐乃「あれ?」 京介「おまえ何か言ったか?」 桐乃「なにも? あんたじゃないの?」 京介「気のせいか? ……とりあえず、今から勉強するから、飲み物にホットミルクでも用意するか」スクッ 桐乃「あたしの分もよろしくね。 あたしはノーパソ持ってこようっと」スクッ テクテク ばたん モゾモゾ あやせ「ふぅ。やっぱりコタツだと狭すぎますね…… 桐乃、思ったとおり、加奈子から貰ったコタツを悪用してるけど、どうやって止めよう。 お兄さんがコタツの中で桐乃にいやらしいことしても、外からじゃわからないし、どうにかしないと…… とりあえず今日はベッドの下で監視を続けて、その結果から対策を立てましょう」 モゾモゾ あやせ「やっぱり、ベッドの下の方が落ち着くなぁ。 でも、冬の床は冷たいから、今度ホットカーペットを持ち込もっと。 あと、桐乃とおそろいのくじらさんスリッパも買わなくちゃ♪ そうすればお兄さんともペアルックですね!」 157 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/11/08(火) 20 15 01.90 ID X2m+HGjQ0 [4/8] 137を書いた後に変な電波を受信した。 佳乃「ねえ、京介。 あんたお母さんたちに隠れて、変な動物飼ってないでしょうね」 京介「動物? 犬も猫も飼ってないぞ。 なんかあったのか?」 佳乃「あんたの部屋を掃除してたら、ベッドの下からこんなのが見つかったのよ」 京介「だからベッドの下の掃除はしないでくれって…… って、なんだこりゃ」 佳乃「ホットカーペットでしょ、枕でしょ、毛布でしょ…… あと中学校の参考書とか、ビデオカメラとか、手錠とか……」 京介「女物の衣類まであるな」 佳乃「京介。 怒らないからちゃんと答えなさい。 これらはどこから盗んだの!?」 京介「盗んでねえよ!」 桐乃「そうだよ! 京介は部屋に置いておいたあたしのパンツだって着服せずにあたしの部屋に戻すんだから、他の女の服を盗んだりするはずないじゃ ん!」 佳乃「え?」 京介「え?」 桐乃「え?」 佳乃「……とりあえず今の話は置いておくとして、それじゃあこの服とかは一体なんなのかしら?」 京介「あ~…… 野生のあやせでも住み着いてるんじゃないか?」 ※野生のあやせ※ ・野生のあやせはベッドの下に住みます。 ・不用意にベッドの下に手を伸ばすと切り付けられたり、手錠を嵌められたりする場合があります。 ・部屋や家えの施錠は無意味です。 ・警戒心が強いので、滅多に人の前に姿を現しません。 ・昼間は学校に行っています。 ・妹とイチャイチャしているときに視線を感じた場合、まず間違いなく貴方はあやせに狙われています。 ・好物は親友や親友の兄の衣類や生写真です。 好物を罠の中に仕掛け、部屋を出たフリをすると、簡単に引っかかります。 ・加奈子を埋める修正があります。 ほとんどの加奈子は後に掘り起こされますが、掘り起こされなかったものは春になると新たな命として芽吹きます。 ・ベッドの下を覗いた時に目が合ったとしても、騒がずに「コンビニに行ってくる」等の口実で部屋を出て、 その後部屋にいる人を速やかに携帯等で呼び出しましょう。 いたずらに刺激するのはとても危険です。落ち着いた行動を心がけましょう。 ・あやせは人に馴致しにくい動物ですが、愛情をもって接すればちゃんと懐きます。 根気良く接して、見事DEAD-ENDを回避しましょう! -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/573.html
160 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/04/13(水) 21 14 20.47 ID BafL/kU30 [3/4] 京介、カメラ持って一緒に出掛けたら、桐乃ばっかり撮るんだろうなw きりりんは「二人で一緒」の写真を撮りたいんで、結局いつもの衝突とすれ違い そんな中撮った数少ない一緒の写真は、桐乃ならず京介までこっそりラミ加工して財布の中に・・・ 164 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/04/13(水) 21 37 01.24 ID AMJNulGAP [4/6] 160 そこはあえて学生証に挟んで、学校で抜き打ち持ち物検査 そしてクラスメイト全員の前でツーショット写真大公開 赤城「高坂、やっぱりお前……」(生温かい眼差し) 京介「やめろ赤城! そんな目で俺を見るな!」 麻奈実「桐乃ちゃん、きょうちゃんと仲良しさんでうらやましいな~」(期待する目) 京介「麻奈実、悪いがこれ以上は勘弁して……」 麻奈実「ぷんぷん! きょうちゃんのけち」 後日 桐乃「ちょっとあんたここに正座」 京介「な、なんだよいきなり」 桐乃「正座」 京介「……(正座しました)で、なんだよ?」 桐乃「あんた、あたしと撮った写真クラス中に見せびらかしたらしいわね?」 京介「!? ち、違うぞ桐乃! あれは見せびらかしたわけじゃなくてだな!」 桐乃「うっさい! あ、あんたのせいであたし今日散々だったんだからね!? クラスメイトからこれでもかってぐらいにいじられて……!」 京介「う……」 桐乃「そ、そのうえあんたが恋人とか……(///)」 京介「な、なんだって?よく聞こえないんだが……」 桐乃「と、とにかく! この罪は重いわよ! 責任とって貰うかんね!?」 京介「せ、責任って、どうすりゃいいんだよ?」 桐乃「む、ま、まだそれは決めて…! そうだ、今度あたしの買い物に付き合いなさい! 丁度荷物持ちが欲しかったのよね。この際あんたでいいわ。だから今度の休みは明けときなさいよ」 京介「ま、待て。いきなり決めるんじゃねえ!俺にも予定ってもんがだな……」 桐乃「あるの?」 京介「……ありません」 桐乃「ふん。じゃあ決定ね。ちゃんと忘れないようにしなさいよ」 京介「わかったよ……」 桐乃「よろしい。じゃああたし部屋戻るから。ふん♪ふん♪ふん♪」 京介「はあ。やれやれだ……俺も部屋戻ろう」 -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1256.html
355 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/11/10(木) 00 25 48.71 ID VXpo186s0 タイトル:季節外れのビーチクイーン 『妹で、そして恋人で・・・』続編その1 「じゃーん、おまたせ~♪」 桐乃は、雑誌から抜け出したようなポーズで俺に水着姿をアピールする。 ここは新しく臨海部に出来た総合レジャーランドである。宿泊施設と一体化された総合施 設で、冬でも遊べる大型の屋内レジャープールが目玉となっている。 俺と桐乃は恋人同士となった記念というか初デートとしてここを訪れた。もちろん俺から 誘ってみたんだけどな。 最初は水着姿を見せたくないとか駄々をこねてたが、来てみると結構乗り気である。 「おお・・・可愛いぞ」 桐乃が着ている水着は、ブルーとホワイトのグラデーションを基調としたシンプルなデザ インのビキニで、胸元をヒモで結ぶようになっている。腰の両サイドもリボンのように結 ばれていて、全体的に少し大人びた感じがする。まあ桐乃が着ると、大人びたというより は健康的な雰囲気だ。 「ふふーーん、なに惚れ直したのっ?」 水着姿に感動する俺を見て桐乃は、上機嫌な笑みを浮かべていた。 「おまえの水着姿って雑誌でしか見たことなかったけど、実物みるとやっぱ違うな」 しかし俺がそう言った瞬間、ちょっとムッとした表情に変わってしまう。 「ふん!雑誌のと一緒にしないでくれる!?」 「そうか?雑誌の水着姿だって結構可愛かったぞ?」 「バカ・・・あんたに見せる水着姿は特別だっつーのっ」 桐乃は聞き取れないような小さな声で何か言う。 「よく聞こえないけど、なんて言ったんだ?」 「うっさい、雑誌のは仕事で・・・その・・・余所行きなの・・・」 「よくわかんねーけど・・・」 「だから、あんたに・・・京介に見てもらうために、今日は特別・・・・・・・」 桐乃はそこまで言うと俯いてしまう。 以前の桐乃だったら、こんなことをまず言わなかっただろう。しかし恋人同士になったこ とも手伝ってか、時折可愛いことを言ってくる。 まあ普段の口の悪さは相変わらずだけど・・・・・ 俺はそんな桐乃が愛しくなり、優しく頭を撫でる。 「そっか、俺のためにがんばってくれたんだな」 「・・・マジキモい・・・わかればいいのよ」 桐乃は上目遣いで俺を見ながら、眉を吊り上げ少し怒った表情を覗かせている。しかしこ いつなりの照れ隠しなのだろう頬は赤く染まっていた。 「よし、最初はどこに行こうか?」 「えっ、あ・・・・・・まずはあそこかな?」 桐乃が正面にあるウオータースライダーを指差す。 「それじゃ、行ってみるか」 俺は桐乃の手を握ろうとした。しかし桐乃は差し出した俺の腕に自分の腕を絡める。 「バカ・・・こっ、こうでしょ・・・」 「桐乃、おまえ・・・・・」 「べっ、別にいいじゃん。こっ、恋人同士なんだし・・・」 そう言って俺から視線を外す。俺たちはそのまま腕を組んでウオータースライダーに向か った。 「おい、結構高いな」 桐乃が指差していたウォータースライダーは、3階建てぐらいはあろうかという本格的な ものである。屋内施設と侮っていたが、上に昇るとその高さを実感できる。 「なに、あんたビビってんの?」 「別に怖くはないぞ、おまえこそ怖いんじゃないのか?」 俺は少し声を裏返らせながら、そう言う。しかし内心腰が引けていた。 桐乃はというと・・・結構平気そうにみえる。 「あたしは、全然っ平気」 「俺も平気だ・・・」 平気そうな桐乃を見て、弱気を見せられなくなった俺は見栄を張ってしまう。 「そう・・・なら行ってこい!」 そう言うと、桐乃は俺の背中を押した。俺はヨロヨロと転けそうになりながら何とかバラ ンスをとろうとするが、結局頭からウォータースライダーへと飲み込まれていく。 『バシャーン!!』 そしてプールへとヘッドスライディングした。 「ゲホッ、ゲホゲホ・・・・・桐乃ッ、なにしやがる!?」 くそー、鼻に水入って頭痛いぞ---あとで覚えてろよ 俺は悪態をつきながら、スライダーに視線を移す。それと同時に歓喜の雄たけびをあげた 何者かが飛び出してくる。 「ヒャッホーーーーーーーーー!」 「桐乃!?」 桐乃はそのまま水面を滑り、俺にボディーアタックを食らわせる。俺は成す術もなくプー ルに沈んだ。 「ちょっと京介、大丈夫?」 意識が遠のきそうになる中、そんな声が聞こえた。俺は必死に目の前にある何かにしがみ つくと、水面から顔を上げる。 「------っ!」 「ゼェゼェ・・・・・死ぬかと思った・・・」 「あっ、あんたどこに・・・つかまってるのよ!?」 「・・・はっ?」 見上げると、怒りに打ち震える桐乃の顔がある。そして頬に感じる柔らかな感触が・・・ 「-----っ!」 「変態!シスコン!死ねっ!シネッ!」 桐乃は俺の頭を両手で掴むと再びプールの底に沈めた。 「桐乃、俺を殺す気か・・・・・・」 桐乃の攻撃から何とか逃げ延びた俺は、ダウン寸前の状態でプールからあがる。プールサ イドには休憩用のテーブルが用意されていて、そこで体力の回復を図ることにした。 「うっさい!あたしの胸に顔押し付けるなんて・・・どんな変態よ!?」 「俺だって必死だったんだよ・・・それで掴んだのが、たまたま・・・だいたいおまえが 突っ込んでこなければだな・・・」 「はあ?あたしが悪いっての?」 桐乃はジロリとこちらを睨んでくる。そんな桐乃の視線にビビり気味なった俺は、最大限 の譲歩を提示してみる。 「まあ、避けなかった俺も悪いか・・・お互いさまってことでどうだ?」 「ふん!あんたがそう言うんなら、そういうことにしといてあげる!」 桐乃も自分に非があるのがわかっているのかそう呟くと、ムスっとした顔で椅子から立ち 上がる。 「おい、どこ行くんだ?」 「なんかムカつくから、飲み物買ってくる。あんたはそこで休んでなさい」 そして売店のほうへ歩いていった。 「おまえ、それ一人で飲む気か?」 売店から戻ってきた桐乃の手には、ドデカいグラスが抱えられている。飲み物っていうよ りは何かフルーツの盛り合わせにも見える。 「はあ?何言ってのよ。あんたも飲むに決まってんでしょ」 そう言うと、グラスをテーブルに置いて椅子に腰を降ろす。テーブルに置かれたグラスに は、ストローが二本刺さっていた。 「おまえ、それカップル用!?」 「そう、なんかムカついたからこれにした」 「言ってること無茶苦茶だぞ」 「うっさいな、恋人同士なんだから問題ないでしょ?」 「そりゃそうだけど・・・・・」 「なんか文句あんの?」 そう言って桐乃は、『あたしが買ってきたんだからおとなしく飲め!』と言いたそうな顔 でこちらを見つめる。 「・・・・・おまえが恥ずかしくないってなら、俺はいいぞ」 「キモッ!あたしは恥ずかしくないわよ・・・あんたこそ恥ずかしいんじゃないの?」 「俺は・・・恥ずかしくないぞ」 そう言うと、証拠を見せてやるとばかりにストローを咥える。それを見た桐乃も、もう片 方のストローを咥える。 二本のストローで同じグラスの飲み物を飲む俺たち。すぐ目の前にある相手の顔が気にな ってしまい、お互いに視線を交わす。 俺の視線が気になるのか桐乃は、少し頬が赤く染まり恥ずかしいそうな顔をしていて、も う先ほどまでの怒りの表情は窺い知れない。 そして飲み物がなくなると、お互いにストローを離す。しかしストローから口を離しても お互いの顔からは目を離すことはできない。そんな俺たちの間にわずかばかりの沈黙が流 れるが、すぐに桐乃は笑い出してしまう。 「プッ、ハハハハ・・・・・なにやってんだろうね、あたしたち」 「なんだよ急に笑い出して・・・」 俺は急に笑い始めた桐乃を不思議に思い、そんなことを言った。しかし桐乃は大きく背伸び をすると 「でも、やりたかったことが出来て満足っ」 と言った。 「やりたかったことって、これがか?」 「そう、前から京介とこういうのやってみたかったの」 「そうか・・・・・他にもあるのか?」 「そりゃ、たくさんあるけど・・・少しずつやってかないとね。つまんないし」 「まあそうだな、先は長いし・・・・・」 そして今度はお互いに見つめると、どちらともなく笑い合った。 夕方まで遊んだ俺たちは帰路に着く。駅から家までの道のりを桐乃と手を繋いで歩いてい る。腕を組んでるとまたなんか言われそうだけど、手を繋ぐくらいなら大丈夫だろう。 「桐乃、楽しかったか?」 「うん、楽しかった」 その言葉を聞いて、俺は桐乃に満足してもらえてよかったと安心した。 「そうか、よかった」 しかし桐乃は、何でそんなこと聞くのかと言わんばかりに不思議そうな顔をする。 「あんた、なに心配してんのよ?」 「そりゃ初デートだし・・・おまえに楽しんでもらえたか心配でな」 俺がそう言った途端、桐乃は歩みを止めて真剣な顔で真っ直ぐと俺を見つめる。 「あんたさ、バカじゃないの?」 「バカって言うなよ、俺は真剣なんだから」 桐乃の言葉にちょっとムッとする。 「あのね・・・あんたもさ、今日楽しかったんでしょ?何で楽しかったの?」 しかし桐乃も俺の言葉にムカついたのか眉をキュッと吊り上げた表情で捲くし立てる。 「もちろん、俺も楽しかったさ。何で楽しかったって言われりゃ・・・そりゃ、おまえと 遊べてつーか・・・一緒にいられたからな」 そんな真剣な表情の桐乃に俺はたじろいでしまい、多少口篭りながらもその問いに答えて いく。それを聞くと桐乃は表情を穏やかにして 「あたしも同じ・・・京介と一緒にいられたから楽しかった・・・そんだけ」 と言葉を紡いだ。そして辺りの様子を窺うと俺の肩に手を当て爪先立ちになり、唇を重ね てきた。 「今日のお礼、また連れてってね♪」 そう言うと、桐乃は満面の笑みを浮かべるのであった。 Fin -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1201.html
731 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/10/12(水) 16 15 28.55 ID no/S7tQ/0 SSとある日常にて 静かな教室に、先生が講釈する声だけが響き渡っている。 わたしは黒板から目を離し、軽く視線を動かす──うんうん、今日も相変わらずだね。 視線の先には、綺麗なライトブラウンの長い髪をもつ女の子──桐乃がいる。その顔は 黒板と手元のノートを行き来しており、時折ノートに書き込む仕草が見える。 今年も学年トップだったんだよね。どの授業に関しても全然手を抜かないし、 ほんと桐乃って凄いなあ。 自慢の親友の事を考えると、わたしは凄く嬉しくなってしまう。桐乃が目立ったり、 褒められたりすると、まるで自分の事みたいに嬉しいんだよね。成績優秀、運動神経抜群、 それでいて容姿だってクラス──ううん、学校一素敵だって思ってるし! そう言えば、男子がこっそりやってるミスなんとかってのでも、三年連続一位だって 言ってたっけ。そう言うのは正直汚らわしい行為だと思うけど、桐乃が一番素敵だって 事には同意かな。二位は毎年変わってて今年が……わ、わたしだって言ってたけど。でも、 桐乃の親友として容姿を磨いてきてる結果がきちんと出てるって事なのかなあ。学校の 男子だから評価には値しないかもしれないけど、桐乃が一番だってのは当然なんだから。 ……と、いけない。また考えに耽っちゃってた。右手のシャープペンシルを軽く握り なおし、黒板へ顔を向ける──と、わたしの右手前の席の男子の顔が桐乃の方を向いている 事に気付いた。……あの人、また桐乃を見てる。あなたの様な人が視線を向けると桐乃が 汚れるじゃない! ここが教室で無ければ埋められたのに……! 「……垣、新垣。聞こえているのか?」 突然、わたしを呼ぶような声に気付きハッとなる。ふと前を見ると先生がわたしを 見つめていた。 「は、はい!」 ふと気付くと周りの生徒の視線はわたしに向いている。桐乃を見ると『どうしたの?』 とでも言いたそうな表情でわたしを見ている。……うう、失敗しちゃったな。こんな所を 桐乃に見られるなんて恥ずかしいよ……。自然と顔が熱くなるのを感じる。 「勉強が出来たとしても、授業中はしっかり集中すべきだぞ」 先生は諭すような声をかけてくる。 「……すみません。少し考え事をしてました」 上手い言い訳が浮かんでこなくて、素直に答えてしまう。 「まあ、正直なのは良い事だ。丁度いい、新垣にこの問いを答えて貰おう」 先生に促され、席を立ったわたしは黒板に書かれた問題をさっと見る。……ここって 昨日予習した所と一緒だ。昨晩の内容を思い出しながら答えたわたしに先生が頷く。 「結構だ。だが授業中なのは忘れずにな」 むー。もう許してくれてもいいじゃない。わたしは心の中で舌を出す。座り際に桐乃を 見ると、わたしに向かって親指を立てていた。心配させてごめんね、桐乃。 □ 「うへぇ、ようやく終わったあ。つーかあの先公しつけーよな。あやせがアホ面で ボーっとしてる時もずっと見てやがったぜ」 加奈子はそう言うと心底嫌そうな顔をする。そう言えばあの先生が大嫌いだっけ。 「そうなんだ。少しボーっとしてたから全然気付かなかったよ」 少し考え、同意の返事を返す。確かにわたしもあの先生はちょっと苦手かな。 授業が終わると、いつも通り桐乃の席に集まり他愛無い話をする。わたしはこの 何気ない時間が大好きだった。仲のいい友達と集まって話すのは嫌いじゃないし、 何より桐乃と一緒にいられる大切な時間だし、ね。 当の桐乃はと言うと、授業とは別のノートを取り出して何やら書いては消したりを 繰り返している。表情も授業の時と同じく真剣なものになっていた。 「桐乃、一体何を書いてるの?」 「……うーん、今度の文化祭でさ、学校のOBの人達が来るらしいんだよね。それで、 学校を代表して出迎えの挨拶してくれって頼まれたんだけど……これがさあ、結構 悩むんだよね。普通の卒業生じゃなくて、大企業の重役さんとか偉い人ばかりみたいで きちんとした挨拶にして欲しいって言われてるんだ」 そう言うと桐乃は再びノートとにらめっこを始める。……偉い人、かあ。お父さんの 知り合いとかそう言う人ばかりだけど、確かに気難しい人が多いんだよね。 「あいっかわらず桐乃はクソ真面目だよな。そんなのチョチョイとやっちまえばいいべ? 偉そうな割に頭の中が空っぽだし、スケベなオヤジが多いから色目使っとけばオッケー! ……ってイテーよあやせ! 教科書の角で殴るなって! しかもスナップ利かせてるしっ」 加奈子が涙目で睨んできたので、微笑み返す。みるみる内に大人しくなる加奈子。 全く……バカな事を言う加奈子が悪いんだよ。 「……んーちょっと浮かんでこないなあ。しょうがない、家に帰って続き考えよ。家なら なんだかはかどりそうな気がするんだよね」 そう言うと桐乃はノートを閉じて鞄に直す。わたしはその言葉を聞いて、少し胸が 痛むのを感じる。 「そういやさ、あやせがこの前連れてきてくれたヘタレマネージャーいるじゃん。確か 名前が……キョウス……ムゲッ!?」 加奈子が言い終わるより早く軽く加奈子の首を握ってやる。すると顔色をカラフルに 変えながらバタバタし始める。──えっと、ギブギブって言ってるのかな? 「……その名前は今は聞きたくないんだよね。加奈子なら、わたしの言う事をきっと 分かってくれると思うんだ」 加奈子にそっと耳打ちすると、コクコクと首を振る。そう言う加奈子が好きだよ。 「えー……っと、あやせどうしたの?」 桐乃が何か怯えた表情でこちらを見てるけど、どうしたのかな。 「何が? わたしは何ともないよ」 「なら良いんだけど、ね……加奈子無事?」 桐乃の問いかけに首を縦に振る加奈子。そうそう、何にも無かったんだって。 「それで、この前のマネージャーさんがどうかしたの?」 「そのキョ……っと、マネージャーなんだけどヨ。ライブの途中で用事つってさ、 いなくなったじゃん。 んで結局さ、加奈子の生歌聞かせてやれなかったんだよな。 で、丁度いい事に今度メルルライブの仕事入ったからさ、また呼んでくれね?」 マネージャーの仕事かあ。……お兄さん、また受けてくれるかな。ってメルル!? ふと横目で桐乃を見ると目が輝いているのが分かった。 「か、加奈子! メルルのライブっていつ?」 「桐乃どうしたってんだ? お前そう言うのにキョーミあったっけ」 「え? あ……ええっと……と、友達がちょ、ちょっと興味あるらしいんだよね! だからもしそう言うイベントとかあったら教えて! って頼まれてんの」 慌てる桐乃を加奈子が訝しげに眺めている。──はあ、桐乃って嘘付けないよね。 相手がバカな加奈子じゃなければ、ばれてるかもしれないよ。 「……まあ、いいけどヨ。んじゃ、人数教えてくれたらチケット手配してやんよ」 「うん! 加奈子ありがとうね。きょ……あいつに教えといてやんないと」 二人のやりとりを見ていると、心から嬉しい気持ちになってくる。桐乃が一番の 親友である事は変わらないけど、加奈子もいい子なんだよね。ちょっと口は悪いけど。 「高坂さーん! ちょっとちょっと」 突然教室の入り口の方から桐乃を呼ぶ声が聞こえた。そちらを見ると、クラスメイトが 桐乃を手招きしている。 「んーなんだろう。ちょっと行ってくるね」 そう言うと、桐乃は席を立って、呼ばれた相手の所に歩いて行った。 気になったわたしが、着いていこうとすると加奈子に呼び止められる。 「加奈子?」 「気にすんなって、いつものやつじゃね?」 その言葉を聞いて思わずため息をつく。ほんと、懲りない人っているんだ。 廊下をみると、長身の男子生徒がいるのが見えた。 桐乃は廊下に出るなり頭を下げると、少し話しただけで踵を返し教室に戻って来る。 再び一度廊下に目をやると、さっきの男子生徒がうなだれているのが目に入った。 「桐乃って相変わらずモテてんな。つか、あいつに断んのって何回目だっけ?」 「……もう数えてらんない」 加奈子にそう答えると、桐乃は不機嫌そうに席についた。容姿だけなら、学校で一番 人気の高い男子だったっけ。でも、桐乃の相手には全然釣り合わないと思うんだよね。 桐乃の隣に並んでいいのはその……わ、わたしとか……キャッ♪ 何か言いたそうな表情で加奈子がこっちを見てるけど、気にしない。 「つーかさあ、別にあたしじゃなくてもいいじゃん。あいつ結構モテるらしいし、 他にも可愛い子いっぱいいるっての。マジウザいしそろそろ諦めてくんないかな」 肩にかかる髪を乱暴にかきあげると、桐乃は机に突っ伏してしまう。 「そっかあ。じゃあ、わたしがお話付けてこようか。平和的に話せば納得してくれるよね」 「ま、いいけどヨ。……加奈子は止めねーかんな」 心の中の埋める予定リストにさっきの男子の名前を刻みこんでおくことにしよう。 キーンコーン──休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴り響くと、教室が少し慌ただしく なり、クラスメイトが各々の席に着き始める。 「ちぇ、休み時間終わりかよ、んじゃまた昼飯ん時な」 加奈子はそういうなり、席に戻っていった。 「オッケー。少し憂鬱になっちゃったけど、後一時間がんばろ」 「わたしも戻るね。さっきの事は忘れよ桐乃。じゃあ、また後でね」 机に突っ伏したまま答える桐乃を心配しつつも、席に戻る事にした。 □ 「うっはあ。やっと昼飯だぜ。もう学校なんて昼飯からで良いんじゃね?」 「加奈子。あんたそんなだからお腹やばいんじゃない?」 「ちょ……桐乃!? それ言うなって、一応気にしてんだからさあ」 午前の授業が全て終わり、わたしは桐乃、加奈子と一緒にお昼ご飯を食べる事にした。 いつもならランちんも混ざって来るんだけど、今日は来ないなあ。 「ランちん来ないね。授業でまだ残ってるのかな」 「今日はお昼から仕事があるって言ってたよ。昨日急に入ったらしくて、あたしに愚痴の 電話が来てた。他に都合の合うモデル捕まらなかったんだって」 わたしの疑問に桐乃が答えてくれる。そうなんだ、珍しいな。 「桐乃には仕事の電話来なかったんだ?」 「うん。うちって親がうるさいじゃん。だから、平日の仕事はご法度なんだよね。それも 仕事再開の条件に入ってたから、さすがに遠慮してくれたっぽい」 そう言われて桐乃の両親の姿を思い出す。確か桐乃のお父さんって警察のお仕事だっけ。 見た目もわたしのお父さんと違ってガッシリしてるし、厳格だって言ってたよね。 「……しっかしさあ、オトコ連中も飽きないよなあ」 唐突に言いだす加奈子を見ると、達観するような視線を右側に投げかけていた。 そちらに目を向けると、他のクラスらしき男子達がちらちらとこちらを見ているのが 分かった。……まあ、言葉の内容からある程度予想はついてたけど、ほんと飽きない人達。 「気にしてても仕方ないっしょ。どうせ飽きたらどっか行くって」 桐乃はと言うと、もう慣れている感じで、黙々と食事を続けている。 ──分かってはいるんだけど、わたしが気にしすぎなのかな。 「そうだ、桐乃は今日って部活あるんだった? もし暇だったら少し付き合って欲しい 所があるんだけどな。この前見つけたアクセサリーショップあったでしょ。今日って新作の 入荷予定らしいんだ。だから良かったら一緒にどう?」 話題を変えようと桐乃に話しかけてみる。桐乃は少し考えているようだった。 「どうしようかな……。さっきの挨拶文も早めに見せて欲しいって言われてるんだよね」 「そっかあ。じゃあ無理……かな」 ……残念だけど、桐乃に嫌な思いさせるのは嫌だから。今度かな。 『おい桐乃』 どこかからか微かに桐乃を呼ぶような声が聞こえた。男性の声、みたいだったけど。 加奈子も──周りも気づいてないみたい。あれ、でもこの声って……。 声がした方角──隣の席の桐乃を見ると慌てた表情で携帯を取り出していた。桐乃は 携帯のボタンを操作して、画面を見つめている。すると表情が少し怒った様な感じに 変わったのが分かった。 「……学校で予習なんて。家でやれっての……ったく」 突然不機嫌になった桐乃に、加奈子は変なものでもみるかの様な視線を向けている。 わたしは携帯に送られてきた──メールとその送り主を推察し、即答えに行きつく。 ……全く、お兄さんは相変わらずここぞって時に鈍感なんですね。──でも桐乃、 さっきの着信音はさすがにどうかなって思うよ……。 「まあ、あのバカは家だとエ……ゲームしかしないし、今回は許してあげるか。あやせ、 学校終わったら、さっき言ってたお店行ってみよ! あたしもちょっと気になるんだよね」 「ほんと! じゃあ、約束ね。良さそうなの、何個かもうチェックしてあるんだ」 わたしは久しぶりに桐乃と一緒に過ごせる事に心から喜んだ。 ──お兄さんには悪いですけど、自業自得ですからね。代わりに今日はわたしが桐乃と ずっと一緒にいてあげますから。 「加奈子はどうする? ロリっぽい子向けのも多分あるっしょ」 「ロリ言うなって! 気にしてんのによ。でも気になるし行って──いや、やっぱ 止めとく! なんかお腹のチョーシ悪くなりそうだし」 加奈子はこちらへそろりと視線を向け──正しい答えへと修正する。そうそう、加奈子は 空気を読める子だもんね。 「残念。それじゃ、良いのあったら後で教えるね」 「オッケー……それで頼むからヨ」 桐乃と加奈子のやり取りを聞きながら、わたしは早く放課後がこないかな、と思う。 そうだ、お店回ったらスイーツショップに行こうかな。あそこは桐乃だったらきっと 気に入ると思うし──ふふ、今から放課後が楽しみだな。 -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1213.html
484 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/10/17(月) 16 29 46.57 ID l3vntX4M0 [2/9] 480 親バレを考えたらこうなった。 京介(俺はもしかして、桐乃を女として愛しちまってるのか? 桐乃も満更じゃねえみたいだし…… ……桐乃と二人で生きていくのも、それはそれでいいかも知れねえな。 けどよ、親父たちになんて言えばいいんだ?) 大介「おい、京介。 俺の部屋に来い。話がある」 京介「話?」 大介「………………」 京介(親父、滅茶苦茶怒ってるんだが……一体どうしたんだ?) 大介「……京介、お前とうとう桐乃に手を出したそうだな」 京介「は?」 大介「惚けるな。お母さんに聞いたぞ。 街中で腕を組んで歩いたり、抱き合ったり、人目も憚らずキスしたり、 ウェディングドレスを着せて連れまわしたり、ラブホテルに行ったり、 二泊三日の泊りがけで熱海に行ったりしたらしいな」 京介「親父!それは―」 バキッ 大介「言い訳をするな!見苦しいぞ、京介!」 京介(駄目だこの親父!頭に血が上って人の話を聞きやしねえ! そもそも、泊りがけの旅行なんてしてないって親父も知ってるはずだろ!) 大介「……おい、京介。 桐乃のことは好きか?」 京介「ああ。世界中の誰よりも大好きだ」 京介(まだ、この気持ちがただの兄妹愛なのかはわからねえんだけどな) 大介「そうか……そこまで言うのなら仕方がない。 お前たちの関係を認めてやる」 京介「え?」 大介「血が繋がっていないとはいえ、お前は俺の自慢の息子だ。 お前になら桐乃を任せられる」 京介(え?血が繋がってないって?桐乃を任せられるって? あれ?あれ?) 大介「孫か……桐乃に似て可愛いのだろうな…… 顔を見るのが楽しみだ」フフフ 京介(えー?) 桐乃「お父さん、なんだって? って、どうしたのその顔! すごい腫れてるよ!?」 京介「親父に殴られた」 桐乃「あんた、何かお父さんに怒られるようなことしたの? ほら、こっち来て。手当てしてあげるから」 京介「悪いな」 桐乃「それで、何があったの?」 京介「よくわからんが…… 俺と親父は血が繋がってなくて、桐乃を任せるから早く孫の顔が見たいらしい」 桐乃「なにそれ……わけわかんない」 京介「俺だってわけわからんぞ。 ……だが、桐乃を任せると言われて、悪い気分じゃないな」 桐乃「……シスコン」カァァァ 京介(確かに俺はシスコンなのかも知れねえけどな、それだけじゃなくて……) 京介「……なぁ桐乃、一つお前に言いたいことがあるんだ」 桐乃「なに?」 京介「俺は、おまえを―」 -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1247.html
748 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/11/06(日) 00 48 16.01 ID rony/F5x0 [1/9] タイトル:妹で、そして恋人で・・・ 「・・・あんた何見てんのよ、マジキモいんですケド」 向かいの席に座って餡蜜をうまそうに食べている桐乃が、ジロリとこちらを睨んでそんな ことを言っている。 俺たちは今、とある紅葉スポットに来ている。別に紅葉狩りとかそんなんじゃなくて、桐 乃が学校の芸術コンクールに出す写真を撮るっていうんで俺が付き合っているわけだ。 「ああ、すまん。うまそうに食ってんなと思って・・・」 「もう、しょうがないんだから・・・・・」 そう、事の発端は一昨日、桐乃から校内芸術コンクールに何を出せばいいのか相談を受け たことから始める。 コンクールは、テーマとして『季節』という漠然としたものが決められているだけで、特 に何を出すかは自由らしい。ようは生徒の自主性と創造性を尊重したお祭りみたいなもの だ。こいつは、中学三年の思い出として何か出してみたいらしい。 まあ、入賞とかは特に狙っていないようだが、出すからにはそれなりのものを出したいと いう桐乃らしい考えはあるようだ。 俺は最初、無難に絵を描けばいいだろうと言ったのだが、桐乃はあまり絵が得意ではない らしい。そこで紆余曲折あり、紅葉を写真に収めることとなった。 もちろん俺が一緒に来る羽目になったのは、桐乃が強引に俺の同行を求めたからである。 俺が受験勉強ばっかりで引き篭もってるのを心配しているようだがどうだかな・・・ 「・・・・・口開けなさいよ」 ボーっと考え事をしていた俺は桐乃言われるままに口を開ける。すると、口の中にひんや りとした感触とほどよい甘さが広がる。 「モグモグ・・・・・うまいな、これ」 「でしょ♪」 スプーンを持って微笑む桐乃が答える。 あれ待てよ・・・・・これって・・・・・・っ!? 「桐乃、おまえ今何したんだ?」 「んっ?あんたがあたしの餡蜜食べたそうにしてたから、食べさせてあげたの。感謝しな さいよね」 予想通り、桐乃は自分のスプーンで俺に餡蜜を食べさせていたようだ。まあいわゆる恋人 同士定番の『あーーーん♪』である。俺たちのことを見ている周りはきっと『リア充はシ ネ!』と思ってるに違いない。 しかし当の桐乃はそんなのお構いなしと言わんばかりに、俺の口に入ったスプーンで餡蜜 を食べている。 まったくこいつは・・・・・ 俺は桐乃の顔を見ながら、ため息をついた。 「あんた、何ため息なんかついちゃって、キモいんだけど・・・」 「・・・・・いや、なんでもねーよ」 「あっ、そうだ・・・・・・あーーーーーん♪」 俺が諦め半分で答えると、桐乃は何を思ったのか口を大きく開けて何かを催促してくる。 「おまえ、突然口開けてなんだよ」 「あんた、あたしの餡蜜食べたじゃない。だからあんたもあたしに食べさせないと不公平 でしょ」 「おまえが勝手に口に入れたんだろ」 「うっさい、いいから食べさせろ!・・・あーーーーーん♪」 桐乃はそう言いながら、再び口を開けて催促してくる。 俺はしょうがねーなと言わんばかりに、ぜんざいをスプーンで掬うと桐乃の口に運ぶ。 「・・・・・どうだ、うまいか?」 「こっちも甘すぎないで結構いけるかも・・・」 桐乃は嬉しそうな顔をしながらそう答えた。 食事を終えた俺たちは、当初の目的である写真撮影をするため渓流沿いにある遊歩道に向 かった。山肌から色取り取り紅葉の枝が張り出してきて渓流の川面に鮮やかな影を落とし ている。まあ、まだ見ごろには少し早いんだろう緑色の葉っぱ混じってるけどな。 俺たちはそんな遊歩道を並んで散策する。 「うーん、なんかイメージと違うな・・・・・」 時折何かイメージが沸いたのか桐乃が、シャッターを切っては首を傾げている。 「どんなの撮れてんだよ?」 俺は桐乃が撮った写真が気になり、聞いてみた。 「これなんだけど・・・・・」 桐乃はカメラの液晶に撮った写真を表示させると俺に見せる。 「これだと、普通に観光で撮った写真だよな・・・」 それが写真を見た俺の第一印象であった。 「やっぱりそうだよね。うーーーーん、どうすればいいのかな・・・」 「ちょっと貸してみろ」 どうすればいいか分からずに煮詰まっている桐乃からカメラを借りると、俺は適当なアン グルを見つけ何枚かシャッターを切ってみる。 「これなんかどうだ?」 「あっ、なんかすごい!結構いい感じかも。あんた、何でこんなテク知ってんのよ」 「ふふふ、それは企業秘密だ」 「なにキモいこと言ってんのよ」 俺は、種明かしをしろとばかりの表情を浮かべる桐乃に対し、自慢げな顔をしてみせる。 実は桐乃に誘われた後、こっそりとインターネットで写真の撮り方を調べておいたのであ る。調べてるときは『俺なんでこんなことやってんだよ』って気持ちではあったが、桐乃 のこんな顔を見られて『まあ悪くないか』と思える。 その後、桐乃は何か感じがつかめたのか、俺の教えた方法を真似しながらいろいろなもの を写真に収めていく。ときには自分なりのアレンジをしたりと、ほんと応用が効くという か勉強熱心なやつだよな。 散策を続けながら写真を撮っていた俺たちは、いつしか見晴らしのいい高台にたどり着い た。山裾を彩る木々は夕日を受けて緑の葉っぱすら紅い色に染め上げていた。 「ここ座ろっか」 「休憩すんなら、戻ろうぜ。もう夕方だし・・・」 「うっさい、いいから座れ!」 桐乃は半ば強引に俺をベンチに座らせる。そして桐乃はそんな俺の隣に寄り添うように腰 を降ろす。 「おい、何でそんなに引っ付いてんだよ」 「少し寒いからいいじゃん」 「そうかよ・・・」 俺はぶっきらぼうに答えると、桐乃と視線を合わせることができず正面にある夕日に映え る山肌を眺めた。 『寒いなら帰ろう』とも言えたのだが、桐乃がこうしたことには何か意味があるんじゃと 思えて言うことができなかった。 「あんたさ、あたしが今日誘った理由わかる?」 桐乃がそんなことを言ってくる。横目で桐乃の顔を見ると俺と同じように正面の山肌に視 線を向けていた。 「そりゃ、受験勉強ばっかりで引き篭もってる俺を心配したんだろ?」 「それは半分・・・」 「あとの半分は、写真撮るためじゃねーのかよ」 俺は当たり前と言わんばかりにそう答える。しかし桐乃の答えは違っていた。 「ああ、それは・・・・・ついで・・・」 「はあ、ついでだと?」 桐乃の答えに呆れてしまい、俺は桐乃に視線を向ける。すると、さっきまで俺と同じよう に山肌を眺めていたはずの桐乃が、真っ直ぐに俺の顔を見つめていた。しかもその顔は眉 をきゅっと引き締め真剣そのものである。そんな顔を見た俺は、次の言葉を続けることが できない。 「あのさ、実はあんたに言いたいことがあって連れてきたの・・・ごめん」 普段は俺に頭を下げるというか、謝るということが『あたしの辞書にはない!』と言わん ばかりの桐乃であるが、俺に『ごめん』と言ってくる。 呆れついでに怒ってやろうと思っていた俺であったが、その言葉に怒ることができなくな ってしまう。 「・・・で、言いたいことって何だよ」 俺が桐乃に話を続けさせようとすると、桐乃は 「ちょっと待って・・・・・・」 と言って目を閉じる。そして何回か深呼吸をすると再び目を開ける。 「それじゃ言うね」 「おう・・・・・・・・」 桐乃は少し間を開けて、俺に聞き取れるようなはっきりとした声で 「あたしさ・・・『京介』のことが好きなの」 と言葉を紡いだ。 俺はその言葉にしばし反応することができなかった。桐乃はそんな俺の反応に訝しげな表 情を見せるが、すぐに穏やかな微笑みに変わる。そして俺が口を開くまでの間を繋がんと ばかりに言葉を続ける。 「ほんとはさ・・・あんたから言ってもらおうって思ってたんだけど、あんた言ってくれ ないし・・・今の関係が続くんなら、このままお婆ちゃんになってもいいかなとかも思っ たけど・・・やっぱダメだった・・・」 俺は桐乃の言葉を聞きながら頭の中を整理した。 それって、兄貴の俺が好きって意味だろ? でもお婆ちゃんになるまでこのままって何だよ・・・・・ 「だからさ・・・今日あんたに告白するって決めて・・・・・告白したの。あんたが、ど う思ってくれても構わない・・・・・あたしが『京介』を好きってことは、この先一生変 わらないから」 桐乃は言いたいことを全部言ったというようなすっきりした顔をして俺の顔を見つめる。 俺はここまで聞いて、ようやく頭の中の整理が追いついた。 「それって、俺のこと兄貴としてじゃなくて・・・その・・・好きってことだよな?」 しかし俺の口から出た言葉は、何とも間抜けなものであった。 「はぁ?あんた、あたしの話聞いてたの!?もちろんそうよ!」 「それっていつからだよ?」 桐乃は少し考えると 「いつからだろ?・・・ロス行くときは、たぶん好きだったと思う」 と答えた。 それを聞いた瞬間、これまでの桐乃の言葉や行動が走馬灯のように流れる。普通、こうい うのって死ぬときって相場は決まってるのだろうが、今の俺にはまさしくその表現があっ ていた。そして次に浮かんできたのは、その時々での俺である。 浮かんでは消える桐乃と俺の言葉や行動、俺はそれらを整理してある結論に行き着く。 おい、これって言ってもいいことなのかよ・・・・・ 俺の口から、その言葉を出すことが躊躇われる。そのまま俺たちの間に沈黙が続く。 どれくらい経っただろうか、お互いに一言も口を開かない。桐乃は俺の答えを待っている に違いない。 ええい、道理なんて知ったことかよ! 俺はそう腹を括ると、自分の結論を言葉にする。 「桐乃・・・俺もおまえが好きだ。たぶんおまえと一緒で『兄妹』って気持ちじゃないと 思う・・・・・だからその・・・」 しかし俺は肝心なところで口篭ってしまう。桐乃は俺の言葉を遮らずにじっと俺が話し終 えるまで待っている。 「だから・・・・・『彼女』になってくれ!」 最後の力を振り絞って俺は言葉を続けた。 「やっと言ってくれた・・・・・」 桐乃が一言だけ答えた。 そのまま俺たちは無言で体を寄せ合う。刻の移り変わりとともに、高台から見える紅葉は より一層夕日の紅に染まり、鮮やかさが増していく。 「ねえ、記念写真撮ろうか」 沈黙の中、桐乃が突然そんなことを言ってくる。 「そうだな」 桐乃と写真を撮るのはどれくらいぶりだろうか、俺は何だか緊張してしまう。 「それじゃ、いくよ」 桐乃はセルフタイマーをセットすると、駆け寄ってくる。そしてそのまま俺の首に飛びつ くと顔を寄せてきて・・・唇を重ねる・・・ これが俺たちの始めてのキスであった・・・・・・ 『カシャ!』 いいタイミングで、シャッターが切られた。神のなせる業か、桐乃の計画か、どちらにせ よ決定的瞬間が記録されてしまった。 「桐乃、データ消せ!」 「ベーーー!これは今日の記念なんだからね」 俺たちの撮影旅行はこうして幕を下ろした。 ---それから数日が経った。 俺と桐乃は恋人同士になったが、表向きはいつものままだ。俺たちの関係は、まだ誰にも 知られるわけにはいかない。 「桐乃、弁当買ってきたから晩飯食おうぜ」 「うん」 その日、親父たちは知人の法事とかで出かけていた。場所が結構遠いらしく、明日の夕方 まで戻らない。 夕食の間、俺たちは終始無言であった。せっかく二人っきりなんだし、何か恋人らしい会 話をすりゃいいんだろうが、俺には何を話していいか検討もつかない。 夕食が終わり、かたづけをすると桐乃が 「あのさ、写真プリントしたから、あとで部屋きて」 とだけ言ってリビングをあとにする。俺は風呂に入ると、桐乃の部屋に向かう。 「おい、入るぞ」 「入って」 俺は桐乃の部屋の扉を開け中に入る。桐乃はベッドに腰を降ろして、写真とにらめっこを していた。俺も桐乃の隣に腰を降ろすと、一緒に写真を眺める。 「なかなか決まらなくてね」 「おまえが一番いいと思ってんのはどれだよ」 「あ、あれは・・・さすがに・・・」 桐乃は、頬を染めながら照れ笑いを浮かべる。 あー、あれね・・・・・ 俺は桐乃の反応を見て、一人納得してしまう。 「あんたはさ・・・どれがいい?」 桐乃から写真を受け取ると、その中から一枚よさそうなのを選ぶ。こいつも納得したよう で、それをコンクールに出すことにしたようである。 しかし写真選びが終わってしまうと間が持たなくなり、なんとも落ち着かない。すると桐 乃から体を寄せてくる。 「おまえ、なにやって・・・・・」 「いいじゃん別にさ・・・今日は二人きりなんだし」 桐乃の言葉を聞いて踏ん切りがついた俺は、桐乃の体を抱き寄せる。桐乃も腰に腕を回し て甘えてくる。俺はそんな桐乃が愛しくなり、優しく唇を重ねる。桐乃は驚いたように目 を丸くする。 「京介ッ!」 唇を離すと、お互いの唇は部屋の明かりでキラキラと輝く銀色の糸で繋がっている。今ま 驚きの表情をしていた桐乃の目から涙が溢れてくる。 「おまえ、泣いてっ」 「うっさい、ビックリしたからとかカン違いしないでね!う、嬉しいからに決まってんじ ゃん!」 涙をぼろぼろと流しながら桐乃はそんなことを言う。 「二回目だろ」 「だってさ・・・・・最初のはあたしからっていうか・・・不意打ちみたいなもんだし、 あんたからしてくれたから・・・」 そう言うと今度は桐乃からキスをしてくる。 「あたしからのお返し・・・・伝わった?」 「ああ・・・・・」 「ふふふ・・・・・じゃあ今度は舌だしてみて」 俺は桐乃に言われるままに、舌を出してみる。すると桐乃は俺の舌に優しく自分の舌を絡 める。 「きょ、ふけえっ・・・・・」 「桐っ乃ッ!」 「んっ・・・・れゆ、っはふ・・・」 柔らかく温かな桐乃の舌に触れると、頭が真っ白になり何も考えられなくなる。それは桐 乃も同じようで、お互いただひたすらに相手の舌を求めあった。 ---翌朝、あたしは肌寒さを感じて目を覚ました。何か頭がボーっとする。風邪でも引 いたのかな? 布団を肩まで掛け直して寝返りを打つと、目の前に安らかな寝顔を浮かべる京介がいた。 何こいつ安心そうな顔しちゃってさ。あたしと添い寝してんのがそんなにいいんだ。 そんな京介の寝顔を見てイタズラ心を擽られたあたしは、京介を起こさないように注意し ながら、腰に腕を回して抱きつく。するとさっきまでの肌寒さが嘘のようになくなり、京 介の温もりで心地よさを覚える。それはまるで直に肌が触れ合うかのような温かさだ。 あれ?何かおかしい・・・・・・・・・・・・・・・ いつもと何か感触が違うのである。しかしその違和感がなんであるかはすぐにわかった。 京介の胸に埋めているあたしの顔にパジャマの感触がないのである。 なんでこいつパジャマ着てないのよ。 あたしは京介がついにシスコン拗らせて変態になったのかと思い、布団の中も覗き込んで 確認してみる。すると下も穿いていない、もちろんあれも・・・それはあたしも同じであ った。 「ーーーーーーーーっ!」 あたしは声にならない驚きの声をあげて、パニックになりそうになる。 待ってよ・・・昨日なにあったっけ? 写真選んで・・・・・抱き合って・・・キスして・・・・・っ! そして一つの記憶にたどり着いた。 「そっか、あたしたちあのあと・・・・・」 あたしの顔の少し上にある京介の顔は、いまだに安らかな寝顔である。しばらくは起きな いだろう。そう思ったあたしは、京介を起こさないように体を上にずらすと、京介の寝顔 を覗き込み 「もう一生離さないかんね」 と言って京介にキスをする。 「ん・・・・・・」 あたしが唇を離すと、京介がゆっくりと目を開ける。でもまだ寝ぼけているのか状況が、 飲み込めていないようだ。しかし少しするとやっと頭が働いてきたのか 「おまえ、なにしてんだよ」 と言った。 「おはようのキス」 あたしはそう答えると、また京介の胸に顔を埋める。京介はそんなあたしの髪をやさしく 撫でてくれた。 どれくらいそうしていただろうか突然京介が 「桐乃、そろそろ起きないとやばいぞ」 と言い出す。あたしも一応時計を確認してみるがまだ6時前である。 「あと一時間くらいこうしてられるじゃん・・・もう少し抱き締めさせろつーのっ」 あたしはそう言って駄々をこねる。 「俺はいいけど、おまえシャワー浴びなくっていいのかよ」 「-------っ!」 あたしはその言葉で我に返る。 そういや、その・・・・・・・そうじゃん! あたしは慌てふためき、ガバっとベッドから飛び起きるとそのままの姿でお風呂場に駆け 込んだ。 もうあいつったら、こんなに・・・・・ あたしはそんなことを考えながらシャワーを浴びる。 しばらくすると外で洗濯機が回る音がして、お風呂場の扉が開く。ビックリして振り返る と京介が立っていた。 「あんた、なに勝手に入ってきてんのよ」 「別にいいだろ、昨日は・・・・・」 「うっさい!」 あたしは手に持っていたシャワーで京介にお湯をかけた。 「もうほんと変態シスコンなんだから・・・」 結局、あたしの攻撃に怯まなかった京介に押し切られて、体を洗ったあたしたちは湯船に 浸かっている。うちのお風呂は少し狭いから、あたしが京介に抱っこされている。 「わるかったな、変態でよ。てか、恋人同士なのにシスコンはないんじゃないか?」 「だってあたしたち・・・恋人同士だけど兄妹だし」 「まあそうだな・・・」 「後悔した?」 「ばーか、するかよ!」 京介はそう言うと、あたしの顔に手を当てて振り向かせるとキスをする。なんて優しくて 心地いいんだろうか、ずっとこうしていたい。 しかしあたしたちだけの時間はそう長くは続かない。洗濯終了を告げるブザーをともにお 互い名残惜しそうに唇を離すと、お風呂からあがる。シーツとかは部屋に干しておけば夕 方までに乾くだろう。 そのままあたしたちは部屋に戻ると制服に着替えて、リビングで朝食をとる。 そろそろ、いつも学校に行く時間だ。 「桐乃、そろそろ学校行こうか・・・」 「・・・そうだね」 あたしたちは手を取り合って玄関に立つ。いつもは別々だけど今日は二人揃って。 この扉をくぐれば、あたしと京介は次に二人だけの時間が来るまで『兄妹』に戻らなくて はならない。 「桐乃、幸せか?」 「うん、あたしは幸せ。京介は?」 「俺も幸せだ」 あたしたちはお互いの気持ちを確かめあうと、どちらともなく軽いキスを交わし玄関を抜 けるのであった。 Fin -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/741.html
278 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/05/29(日) 21 40 37.84 ID VOOU6kaJ0 [2/3] 【SS】月夜と祭りとすれ違い 「今週末、お祭りに行くから」 突然うちの妹様がそう切り出したのは、新学期が始まってから半月ぐらいたった時だった。 つまり、黒猫を捕獲しに温泉に行ってから、半月後ということになる。 あれから一週間くらいはお互いにお互いを意識しながら、それでも桐乃が素直になったからか、それなりに仲良くやってたと思う。 しかし一週間くらい前からか、桐乃が少しずつ俺を避け始めるようになった。 別に前みたいに無視されるわけじゃねーし、時にはゲームに誘われたりもするんだけどさ、なんか前に戻っちまったみたいで、あんまりしっくりこねぇんだよな。 あんなことがあったんだからもっと俺たちの関係に変化があってもいいはず―とは思うものの、 俺が桐乃のために何かした後もいっつもこんなんだったな、と納得するところもある。 やっぱりゲームと現実は違うって事かね。 でもまぁ、一番じゃないと嫌だと言われた俺としては、もっと桐乃にかまって欲しい―もとい仲良くなりたいわけで、 黒猫が最後に残していったゲームに誘ったり、 新しい携帯の待ち受け(黒猫にエロゲをやらせてにやにやしている姿)を見せたり、 桐乃仕様にデコった筆箱を見せたりしたわけよ。 でもその度に顔を真っ赤にして怒りやがって。 おまえが一番だって示してやってるのに、いったい何が不満なんだか。 先週末に誘ったデートも忙しいからって断られたしな。 今日も桐乃がかまってくれないので、仕方なく一人寂しく受験勉強してたんだが、そんな折に突然俺の部屋に入ってくるなり桐乃が行ったのが上の言葉だ。 「そっか。あやせたちと一緒に行くのか?気をつけろよ」 別に友達と一緒にお祭りに行くのに俺に報告なんか必要ないだろう。 それにしてもお祭りか。ラブリーマイエンジェルあやせたんの浴衣姿を見るために、桐乃の保護者役としてついていくのもいいな。 俺の返事に、桐乃は顔をしかめ、腕を組む。 「は?あんた何言ってんの?あたしとあんたの二人で行くの」 ・・・・・・俺と桐乃の二人で? 「なんで俺たち二人でなんだよ。お祭りに行くならあやせとかと一緒に行ったほうが楽しいんじゃないか?」 そういう場所はあやせたちと一緒に言ったほうが楽しいって前に言ってたしな。 「いいじゃん別に、たまにはあんたと二人でもさ。あと、あんたに拒否権はないから」 最近ちょっとは素直になってきたと思ってたんだが、相変わらずうちの妹様は一方的だな。 まぁ、俺としてもおまえと二人でどっかに行きたいと思ってたし、まったく問題はないんだけどな。 「そうだな・・・・・・」 あとは俺の都合か。最近桐乃や黒猫にかまっていた時間が長いので、勉強時間が短くなっている。 黒猫にも言ったとおり勉強をおろそかにはしていないので、今の調子でもまず問題はないはずだが、週末がつぶれるとなると前倒しで勉強しておくべきか。 「―やっぱり、駄目?」 俺の答えが遅かったからか、桐乃が節目がちにそう言った。 「黒猫とは一緒に行けても、あたしとはイヤなの・・・・・・?」 少しだけ苦しそうに、桐乃はそう続けた。 なんでここで黒猫が出てくるのかは分からないが、俺が考え込んでしまったせいで勘違いさせてしまったようだ。 「そんなことねぇよ。おまえと一緒にお祭りに行けるなんて、今から楽しみだぜ」 そう言い、桐乃の頭に手を乗せ、ゆっくりとなでる。 そう、桐乃と祭りに行けるなら、今から週末まで連日徹夜で勉強したとしても苦ではないぜ。 「妹と二人でお祭り行くのがそんなに楽しみだなんて、あんた本当にシスコンだよね」 先ほどの表情は何処へやら、俺の手を払うと桐乃はそう言う。 ・・・・・・まあ、いつもの事なんだけどね。 「でも、あたしと一緒にお祭りに行けるのが、そんなに楽しみなんだ」 ふーん、と意味ありげにこちらを見る桐乃。 「なんだよ、おまえは楽しみじゃないのか?」 その言葉に桐乃は一瞬だけ口をつぐみ、視線を逸らす。 「そりゃ楽しみなんだけど・・・・・・ちょっと、ね」 言いたいことがあれば言えばいいだろうに、言いよどむなんてこいつらしくない。 まさか、本当は行きたくないんじゃないだろうな。 「―とにかく、あんたはあたしと一緒にお祭りに行くの!わかった!?」 こちらを睨みつけると、桐乃はいつものように居丈高に宣言した。 まったく、なんなんだろうね。 「へいへい。ところで、一体何処のお祭りに行くんだ?」 桐乃が再び目を逸らす。こいつ、何を隠してやがるんだ? こいつが変に隠し事をするときには、大抵ろくなことにならないんだが・・・・・・ 「―ここ」 桐乃は少しだけ言いづらそうに口を開くと、プリントアウトしたらしい、とある広報を俺の前に差し出した。 「月見―か」 月見の祭り。季節を感じさせるその言葉は、俺に黒猫との最後のデートを想起させた。 そして週末、俺は桐乃と一緒にとある神社に来ていた。 日が落ちきる前に来たのだが、すでに神社の近くは祭りに参加している人たちの喧騒や出店でにぎわっていた。 道の脇に並ぶ出店を見ると、あの時のことを思い出す。一月も経っていないのに、ずいぶんと懐かしい。 あの日―花火大会の夜に俺は黒猫に振られた。 結局黒猫の思惑もよくわからなかったし、こういう雰囲気にはあんまり良い思い出が― ―いや、そうでもないか。 確かに悲しい思いはしたけれど、あの日黒猫と一緒に出店を見て回った思い出は、あの楽しかった思い出は決して間違いなんかじゃないんだから。 あの時思った、一生の思い出となるだろうって考えは、きっと正しい。楽しい思い出と、辛い思い出を織り交ぜて、ずっと心の中に残るだろう。 「・・・・・・」 出店が始まる場所で立ち止まった俺を、隣で桐乃がじっと見つめている。 「どうした?」 俺と目が合うと、桐乃はさっと目を逸らした。 「・・・・・・別に」 何なんだ一体。ここに来るまでもやけにはしゃいでるかと思えば、考え事をしている間にいつの間にか静かになっていてこちらを見ていたりする。 ―まったく、おまえが変なのはいつものことだけどさ、せっかく今から祭りを楽しもうってのにその態度はないだろう。 まぁ幸いにも、今だけ使える桐乃を元気付けられる言葉を、俺は知っている。このままなのも気分が悪いし、仕方ないからその言葉を使おうか。 「なぁ桐乃」 「なによ」 桐乃がこちらを向く。 俺は一度大きく息を吸い、桐乃の目を見て、言った。 「今日のおまえ―綺麗だな。その浴衣、おまえによく似合ってる。まるで天女だぜ」 家を出てからずっと言わなかった言葉。・・・・・・別に、桐乃に見惚れて言葉が出ないうちに言いそびれたわけじゃないぞ? 俺の言葉に反応して、桐乃の顔が赤く染まっていく。 あれ?予想以上の反応だな。 「ふんっ!」 突然桐乃が俺の向こう脛を蹴り上げた。 「っ痛!桐乃、おまえ何するんだ!」 涙目になりながら脛をこする。知っているか桐乃、そこを攻撃されると武蔵坊弁慶ですら泣くんだぞ。 「うっさいっ!デリカシーのないあんたが悪いの!」 ・・・・・・?なんで綺麗だって褒めたのにデリカシーがないってことになるんだ? 「でもまぁ、その、褒めてくれたことは嬉しいし?だから許してあげる」 許すのなら蹴らないでください妹様。 「あ、あと」 桐乃が腰を下げ、しゃがみ込んだ俺の顔を覗き込む。 桐乃は一度大きく息を吸い、俺の目を見て、言った。 「お父さんには敵わないけど、京介の着流しも似合ってるよ」 顔に血液が集まるのがわかる。 な、なるほど。兄妹に服装を褒められるのってこんなに恥ずかしくて嬉しいもんなんだな。 「ほら、行くよ!」 桐乃は脛をさする俺の手をつかむと腰を上げる。 桐乃の手から熱が伝わり、足の痛みを忘れ立ち上がる。 「あ、ああ」 桐乃は俺の手を引き駆け出し、 ―すぐにその手を離した。 「―え?」 少し先を駆け出す桐乃を前に、俺は手を伸ばしたまま一歩を踏み出せない。 「なにやってんの?」 桐乃が振り向き問う。 「あ、あぁ。今行くよ」 俺は答え、桐乃のほうへと歩いていく。桐乃はうきうきとした調子で俺が近づくのを待つ。 ―よくわからないが、桐乃の機嫌は直ったらしい。 ただ何故か少しだけ寂寥感を覚え、俺はまだ熱の残る手を握った。 花火大会よりも小さな規模ながら、この祭りも十分に賑わっていた。 いつぞやのデートとは違い、桐乃は秋葉原でそうするように、俺をあちこちへと引っ張りまわした。 桐乃にメルルがプリントされた袋に入ったわた飴を見つけてはしゃいだたり、 ヨーヨー釣りで桐乃と競ったり、射的がまったく当たらず怒った桐乃に銃を向けられたり、 型抜きでメルルに挑戦するも完成直前に真っ二つに割ってしまった桐乃を慰めたり、 ゲームが当たるくじで桐乃が見事にシスシス(全年齢版・初回特典付き・留学中に発売されたため今じゃ手に入らないと桐乃を悲しませた一品)を当てたりした。 もちろん全部俺のおごりでな! ここに来るまではもしかしてこれってデートなんじゃないかとも思ったが、この様子だとただの兄妹でのお出かけのつもりらしい。 まぁあの時のデートは俺の気を引くためにでっち上げたものらしいし、桐乃を一番に選んだ今ならそんな雰囲気は不必要だってことだろう。 ―でもなんでだろうな。桐乃とのお出かけと、あの日の黒猫とのデートを重ねてしまうのは。 射的が当たらず怒っている桐乃を見て黒猫は器用だったなとか、 くじで大当たりを当てた桐乃を見て黒猫ははずれしか引けなかったなとか、 黒猫は俺に奢らせるのを渋っていたなとか、つい考えてしまう。 「・・・・・・」 少し前を歩いていたはずの桐乃が、いつの間にか隣に立ってこちらをじっと見ていた。 まずいな。黒猫のことについて考えていたのがばれたか? そうなると何時もの様に二人でいるときに他の女のことを考えるなという罵声が― 「はい」 身構えた俺に、桐乃が爪楊枝に突き刺したたこ焼きを差し出した。 「美味しいから一つあげる」 あげるって、それさっき俺が買ったやつなんだけどね。 突き出されたたこ焼きの上ではうねうねとかつお節が踊っている。 「こ、このまま食べるのか?」 確かに美味しそうなんだが、もしかしてそのまま食べろと?せめてその爪楊枝をこちらに渡してくれ。 「あ、そうか」 桐乃はたこ焼きを手元に引き戻し、 ふーふーと息をかけて冷まし始めた。 「はい、これでいい?あんた熱いの苦手だもんね」 事態が悪化した!? 「あ、あぁ」 とは言え、せっかくの桐乃の好意を無碍にはできない。それにせっかく桐乃から歩み寄ってくれているんだ。ここで受けなきゃ男が廃るぜ! 俺は覚悟を決めると口を大きく開き、差し出されたたこ焼きにかぶりついた。 「あふぁっ!」 桐乃に冷ましてもらったがそれでもたこ焼きは熱く、口の中が容赦なく蹂躙される。 「ちょっと!一口で食べなさいよ!」 涙目で桐乃のほうを向くと、半分になったたこ焼きが爪楊枝から落ちそうになっている。 そんな事言ったってその大きさの熱いたこ焼きは一口じゃ食えねぇって! 落ちる前に次の一口を食べようと、口に残ったたこ焼きを咀嚼する。 だが口の中が空く前にたこ焼きは滑って行き、 パクっと桐乃が残ったたこ焼きを食べた。 お互いにお互いを見ながらたこ焼きを味わっていく。 しばらくして口内のたこ焼きが無くなる。口内を火傷したからだろうか、顔が熱い。 「なぁ、桐乃」 「なに?」 「たこ焼き美味かった」 「そう。じゃあさ、今の半分しか食べられなかったし、あと一口食べる?」 俺は黙って頷いた。 出店を一通り見終わったころには、すっかり日は落ち満月が夜空に輝いていた。 「さて、月も昇ったしどこかで団子でも食べながら月を眺めるか」 「そうだね」 俺は先ほどの出店で買った団子やらくじで当たった景品やらを手に、月見にいい場所がないか探す。 少し戻ったところから階段を上り境内に上がれば眺めはいいんだろうが、生憎出店と人で落ち着いて月を見れそうな場所はなかった。 さて、どうしたもんかな。そう考えていると、服の袖を引かれた。 「こっち」 桐乃は一言だけそういうと、袖から手を離し俺の返事も待たずに出店から離れるように歩き始めた。 俺は桐乃の背中を見失わないように追いかける。 しばらく無言のままくらい町の中を歩いていると、桐乃が横道にそれる。 桐乃の後をついていくと、どうやらそこは丘の上に建つ神社の裏側へと続く道のようだった。 ここに来るのは初めてだと思ったのに、桐乃のやつはどうしてこんな道のことを知ってやがるんだ? 前に親父やお袋と一緒に来たことあったっけな? それとも、あまり考えたくもないが、誰か俺の知らない奴に誘われたりしたのかな― そんなことを考えながら、お互いに無言のまま階段を上がってく。 桐乃は先ほどまであんなにはしゃいでいたのが嘘のように静かだ。 こちらも見ずに一人さっさと上がっていく桐乃を見ていると寂しくなったので、早足で桐乃のすぐ隣に並ぶ。 桐乃は隣に来た俺を一瞥したが、一歩横によけるとそのまま前を向いて早足で階段を上がっていく。 ちぇ。少しくらい仲良くしてくれてもいいだろうに。 階段を上がると、そこは開けた場所となっていた。それほど広い場所ではないがベンチも置いてあるし、町と空を一望できる。 幸いな事に先客もいないようだった。 ただ灯りもないため、頼りにできるのは満月の光だけだ。 俺はベンチに近づき懐からタオルを取り出すと軽く払い、その後裏にしてベンチに置くとその隣に座った。 桐乃も無言のまま俺の隣に座る。 俺はひざの上に団子のパックを載せるとフタを開け、中から一本桐乃に手渡す。 桐乃が団子に口をつけるのを見た後、自分の分を取り出し食べ始める。 お互いに月も見ずに、お互いのことをちらちらと確認しながら団子を食べていく。 五分くらい経っただろうか。先に口を口を開いたのは桐乃だった。 「ねぇ、私とのデートどうだった?」 食べ終わり咥えていた団子の串が口から落ちる。 「え?これってデートだったの?」 「はぁ!?あんた何だと思ってたの!?」 桐乃が俺に詰め寄る。 「えっと、ほら、兄妹でのお出かけというか、せっかく仲良しに戻ったんだし二人でどっかに行きたかったのかなーって」 「それをデートって言うんじゃない」 「でもほら、前にデートしたときとぜんぜん違うじゃねぇか。前はこっちにリードさせようとしてたのに今回は引っ張りまわすし、 一緒に秋葉に買い物に行くときのノリかと思ったんだよ」 「うっ。でもそれは、その・・・・・・」 俺の反論に桐乃は言葉に詰まる。 「俺だってな、ここに来るまでおまえとデートできるんだって楽しみにしてたんだぜ? でもおまえは何時も通りだし、時々じっとこちらを見てるし、俺一人で舞い上がってたんじゃないかって寂しかったけど、 それでもおまえと一緒に遊べるんだし、おまえが楽しめるように頑張ったんだよ。 それにな、ただのお出かけなのに俺がデートだと思ってたらおまえ嫌がるだろう?」 桐乃は下を向いて「別に・・・・・・嫌じゃ・・・・・・」とかつぶやくがよく聞き取れない。 しばらくして桐乃は面を上げると 「別にあたしとデートするのは嫌じゃないんだよね?」 「当たり前だろ?この間だってデートしようぜって誘ったじゃねぇか」 「あんたの場合どこまで本気なのかわかんないんだもん。どこ行くつもりなのか聞いても考えてないって言ってたし」 失礼な。俺は何時だって真剣だぜ。ただ最近は思いついたら即実行が染み付いて考えが足りてないかもしれないがな! 「じゃあさ、デートだって知ってたらさ、態度変わったりした?」 今回がデートだと知ってたら? そうだな、桐乃の格好を誉めたり、欲しいものを買ってやったり、楽しそうに遊んでいる桐乃を近くで眺めたり、たこ焼きを半分こしてみたり・・・・・・ あれ?何も変わってないんじゃね? 「変わらん気がするな」 「―そう」 桐乃は少しだけ目を細めてそう言った。 ・・・・・・なんでそんな表情するのかわかんねーけどさ、俺はそんな顔は見たくねーんだよ。 「でもな、桐乃」 「なに?」 「デートだったと知ってたとしてもさ、たぶん今とおんなじで ―すっごく楽しかったと思うぜ」 黒猫とデートしたときと同じで、今回のデートも俺の心にきっと一生残り続けるだろう。 「―そう」 納得してくれたかはわからないが、とりあえず機嫌は直ったみたいだな。 「じゃあ次の質問」 「まだあんのかよ!」 「あたりまえじゃん。あんたには色々と聞きたいことがあんの」 マジかよ。あと何回か桐乃のご機嫌を伺わないといけないわけ? くそっ!次は間違えねーぞ!冷静に答えれば桐乃が満足する答えが出せるはずだ。今までだって何とかうまくやってこれたしな! 「あんたさ、今日のデートで何回黒猫のこと考えた?」 「すげぇ答えづらいこと聞いてくるな!オイ!」 というかやっぱり気付いていたんですね! 「気付かない筈ないじゃん。あんたの考えてることなんて顔を見ればすぐにわかるっつーの」 みんな俺の心を見透かしたような事言うけどさ、俺ってそんなに分かり易いの? 「まあ答えは聞かなくていいや。なんとなくわかるし」 「じゃあそもそも質問しないでくれますか桐乃様!」 俺の純情ハートをもてあそびやがって! 「あんたさ、あんなにきっぱりと振られたし自分でもあきらめたのに、何?まだ未練たらたらなの?」 あきらめる原因となった妹様に言われたくねーよ。 「・・・・・・未練がないって言ったら嘘になるけどさ、でもそれが原因じゃねぇんだよ。 あんな終わり方になっちまったけどさ、黒猫と一緒にいたときは本当にすっごい楽しかったんだよ。 俺が好きな人が俺のことを好きでいてくれて、俺のことをすっごい好きでいてくれる人がさ、俺と一緒にいたがってくれて、俺に喜んでもらおうとしてくれてさ。 俺にとってそんなのは初めてだったんだよ。忘れられるもんじゃねぇし、ふとしたことで思い出しちまうんだよ」 正直な気持ちだった。 あの夏の日々はすべてが初めてで、すべてが刺激的だった。忘れられるはずもないし。忘れたくもない。 これからも、今ほどではないにせよ、ふとしたことであの日々のことを思い出すんだろう。 「・・・・・・じゃあさ、地味子とはどうなの?あいつだってあんたの事好きなんでしょ?」 「地味子っていうな。何度も言ってるだろ?真奈美は彼女じゃねぇって。 真奈美は何て言うか家族って言うか、一緒にいると楽しいって言うより落ち着くんだよ」 「・・・・・・家族だと、落ち着くだけ、か・・・・・・」 再び桐乃はぼそぼそと喋る。 あれ?また選択肢間違えた? 「でもあれだ!黒猫とのデートのときも結構おまえのこと考えちまってたぜ?黒猫は何も言わなかったけどな」 慌ててフォローの台詞を言う。でもなんか言わなくてもいいことを言った気がする。 「はぁ?あんた彼女とのデートの最中に妹のこと考えてたの!?キモ!最低!」 桐乃が顔を赤くして俺に迫る。ううっ確かに悪いことしちまってたな。 「好きな人と一緒のときに妹のこと考えるだなんて、あんたシスコンこじらせすぎ。 まさか桐乃ならこうなのに~とか言ってないでしょうね?」 言いました。ごめんなさい。 「―まぁ、でも、そっか・・・・・・ うん。許してあげる」 「いいの?」 「あいつだってあんたの考えてることなんかわかるだろうし、それで何も言わなかったんならそれについてあたしも何もいえないじゃん? それにあいつが不問にしたんだったらあたしも不問にする」 そりゃ良かった。それにしても、どうして黒猫は何も言わなかったんだろうな。 「次の質問」 まだまだ続くのか・・・・・・こうなりゃ覚悟を決めるぜ! 「どうして黒猫のこと本名で呼んであげなかったの?」 「―え?」 突然話題が変わっただろうか?俺の頭は今の言葉をなかなか理解できなかった。 「黒猫から聞いたんだけどさ、あいつがあんたの名前を呼んでも、あんたはあいつの本名を呼ばなかったらしいじゃん」 「それは―」 何故だろうか。黒猫とデートする前日なんか、あいつと名前を呼び合う姿を妄想していたっていうのに。 あいつに名前を呼ばれて、くすぐったかったけど嬉しかったっていうのに。 ―そういえば、ちょっと前にもあったな。こんな自分でも自分の心が分からなかった時が― 「あのさ、おまえには言ってなかったけどさ。俺黒猫に告白されたときさ、すぐに答えられなかったんだよ。 何でだと思う?」 「ヘタレたからじゃん?」 間髪いれずに答えるな!確かに俺はヘタレだけどさ! 「そうじゃなくてさ、俺は答える気があったんだけど体が動かなかったんだよ。 その理由が後になって分ったんだ。おまえに彼氏を作るなって言っておいて、自分が作るわけにはいかねぇって思ってたんだなって」 「あ―」 「たぶん、それと同じなんだよ。 黒猫ってさ、何かある度に呼び方変えてくるじゃん。それなのに彼氏になっても『先輩』のままで寂しかったんだ。 でもさ、実際呼び方が変わって本当に彼氏彼女になったんだなって思ったらさ、なんか名前を呼べなかった」 「・・・・・・」 「俺が名前を呼んじまったら、俺たち全員の間柄が変わっちまってさ、せっかく桐乃とも仲良くなってきたっていうのに、 また疎遠になっちまうんじゃないかと思ったら、怖くなった」 あの時は無意識だった。でも、きっとそういうことなんだろう。 「―それってさ、黒猫と彼氏彼女と認め合うより、あたしと離れたくなかったって事?」 「うっ!た、確かにそういうことになんのかな?」 「キモ!本当にあんた救いがたいくらいのシスコンよね」 そう言われると滅茶苦茶恥ずかしくなってきやがった! 今の俺の顔は真っ赤だろう。だが、満月の光しか明かりがないからバレないだろう、たぶん。 隣で笑っているであろう桐乃の顔色は伺えないし、さっきみたいに近づかれない限りは平気なはずだ。 「本当に黒猫が可哀想。あんたを振りたくなるのも分るわね」 土下座でも何でもするからもう追撃しないでください! 「うん。分った。そういうことか」 これ以上俺のシスコンぶりを理解しないでください!シスコンだってのは認めるけどさ、おまえにからかわれると恥ずかしいんだつーの! 「それじゃあ、最後の質問」 ふう、ようやく最後か。今までより答えづらい質問だろうから気を引き締めないとな。 「黒猫と別れたのって、何回目のデート?」 「はい?」 予想外に答えやすい質問に拍子抜けする。 「何回目のデートでフラれたかって聞いてんの!」 「あ、あぁ」 黒猫との逢瀬のことを一つ一つ思い出しながら、指折り数を数えていく。 「―回目だな」 「ふ~ん。そう」 なんでデートの回数なんか気にするんだ? 「そっか、だからか」 え?今ので何かわかったの? 「何がわかったんだ?」 んとね、と言い、桐乃は町のほうを見る。 「なんであんたがあの時フラれたか」 「はい?」 何で今のでわかるの? 「え?なんで?何で俺あの時フラれたの?」 「教えてあげない」 「いいじゃん教えてくれても!俺なんかまずいことしたの?」 「たぶんまずいことしかしてないけど」 俺ってそこまでまるでダメな雄、略してマダオ!? 「教えてくれないといつか彼女ができたときに同じ理由で振られるだろう!」 「フラれた方がいいから教えない」 桐乃はそっぽを向く。 そうだった。こいつは俺に彼女ができて欲しくないんだった。 「それに、あの時にフラれた直接的な理由はそれじゃないし」 え、どういうこと? 「理由はたぶんあたしだから―気にしなくていいよ」 「どういうことだ?」 わけがわからないよ。 「はい、この話はおしまい!」 桐乃はそう言うと勢いよく立ち上がった。 「それじゃあ帰ろうか!」 え?帰るの?色々と謎を振りまくだけ振りまいておしまいって、そりゃないだろう。 「ちょ、ちょっと待て!」 踵を返そうとする桐乃の腕を掴み静止させる。 「なに?」 「おまえからの質問に答えたんだ。俺からもひとつだけ訊かせろ」 「―なに?」 祭りに来る前からずっと気になっていたこと。それは― 「なんで俺を誘ったんだ?」 「そ、それは―」 「おまえ、最近ずっと俺を避けてただろ? そっちの理由も気になるけどさ、避けてたのに俺を誘うって事はなんか話したいこととか、して欲しいことがあったんじゃないのか?」 「そ、それは今訊いたじゃん」 桐乃は俺の腕を振り払うと何歩か後ろに下がる。 「それだけならわざわざここまで来る必要なかっただろ? それにさ、今無理矢理切り上げようとしたじゃねぇか」 普段のこいつは勝気で何にでも突っかかっていくが、理由はわからないが偶に弱腰になって一歩引いてしまうことがある。 ―こいつがアメリカに行く前の夜なんてのはその例だ。 あの時桐乃が一歩引いたのを気にしなかったから、俺は『選択肢を間違えた』。 正しい選択肢を選ぶべきだったのかは、今となってはわからない。 でも、絶対に後で後悔はしたくない。 「俺はおまえみたいになんでもできるわけじゃねぇし、頼りにならないかもしれない。 でも俺はさ、おまえが大事だからおまえの力になりてーんだよ」 暗くても、少し離れたところで桐乃が小刻みに震えているのがわかる。 やばい、怒らせちまったか? 「―ならないはずないじゃない」 「なんだ?」 「―なんでもない!」 怒鳴りやがった。やっぱり怒っていやがるな。 心を落ち着けるためか、桐乃は一度大きく深呼吸する。 「あんた勘違いしてるみたいだけどさ、本当に用事は終わっちゃってるの。意味があったかはわからないけどさ。 訊きたいことも聞けたし、あたしはもう満足しちゃってるの」 「じゃあさ、おまえ―なんでそんな表情してるんだよ」 「え?」 「おまえ、今にも泣き出しそうじゃねぇか。そんな顔されたら絶対に引き下がるわけにはいかねぇじゃねーか」 桐乃は一歩下がると手で顔を触った。 「嘘。この暗さだと、そこから見えるはずないし」 「嘘じゃねーよ。俺は桐乃に泣いて欲しくないから、泣きそうだったらわかるんだよ」 俺はこのデートが楽しかった。きっと桐乃にとってもそうだろう。だからそんな思い出の最後を、悲しいものになんかしたくない。 ―そう、あの時のような。 「俺じゃ力になれないかもしれないけどさ、言うだけ言ってみろよ」 「うっさい!本当に何もないの!ここで帰んないといけないの!」 帰らないといけない? 「帰らなくちゃいけないって、それどういう意味だよ」 「あ・・・・・・」 口を滑らせてしまったんだろう、桐乃が両手で自分の口をふさいだのがわかる。 「やっぱりなんか理由があるんじゃねーか。そりゃ俺には絶対に言いたくないことかもしれないけどさ、それならせめて安心できるようなことを言ってくれよ」 その言葉が桐乃の琴線に触れたのか、桐乃の態度ががらりと変わる。 「―あたしはあんたとデートしたかっただけなの!」 暗くても肩を怒らせているのが分る。 「あんたさぁ、ずっと黒猫にフラれたの気にしてたじゃん。だからそれを忘れさせてあげようと思ったの!」 黒猫に振られたのを気にしていた? 「そんなことねーって!もう気にしてねーし桐乃を大事にするって決めたから、おまえともっと仲良くしようとしてるんじゃねーか!」 ちっと桐乃が舌打ちするのが聞こえた。 「気にしてないはずないじゃん。じゃあどうしてあんたあたしをあのゲームに誘ったの?」 あのゲーム?黒猫が最後に作ったシューティングゲームのことか? 「待ち受けにも黒猫が写ってたし、筆箱のデコにも黒猫のシールがワンポイントとして貼ってあったじゃん! あんたは気づいてなかったのかも知んないけどさ、そういう未練がましいのマジムカつくんだっての!」 桐乃に言われてやっと気がついた。 確かに俺は無意識に黒猫の影を追い続けていたのかもしれない。 そうだよな・・・・・・おまえを一番に選んだってのに、振られた相手に未練を持ってたりしたら、そりゃいい気もしないよな。 「それに仲良くしようとしてる?本当にそれだけ?もしかしてあんたさぁ、 あたしを黒猫―彼女の代わりに見ようとしてない?」 「え?」 妹を彼女の代わり? 「前にあたしがいなくなって寂しくて、黒猫に代わりにするなって言われたらしいけどさ、それと同じじゃないの?」 「あ―」 前に桐乃が留学してしまったとき、俺はその寂しさを埋めるために黒猫にかまった。 もちろんそれだけじゃなかったが、それは決して否定は出来ない。 「だからデートでもデートじゃなくても同じだったんじゃないの?あたしとデートしたかったんじゃないの?」 「それは違う!」 そこだけは否定しなくちゃいけない。 「確かに黒猫と別れて寂しいって気持ちがあったのは間違いないし、黒猫にかまっていた代わりにおまえにかまおうとしていたんじゃないかって言われれば否定できない。 でもな、おまえはおまえだよ。それとは関係なく今日おまえと一緒だったのは楽しかったし、デートとかデートじゃないとか関係なくおまえといるのは嬉しいんだ」 俺の一番でいたいと言った桐乃を俺は一番に選んだ。だから俺はもっと桐乃仲良く良くなりたい。 それだけは決して間違いなんかじゃない。 「俺は本心からおまえと仲良くなりてぇんだよ。俺はまだ桐乃のことが嫌いだし、桐乃も俺のことが嫌いなんだろ? だから仲良くなってさ、桐乃にちょっとは好きになって欲しいし、桐乃のことをもっと好きになりてーんだよ」 「・・・・・・」 桐乃からの言葉はない。少しくらいは俺の気持ちが伝わったんだろうか。 二人とも無言のまま時間が過ぎていく。 先に口を開いたのはまたしても桐乃だった。 「あたしさ、兄貴の一番でいたいの」 こちらを見ずに、俺の足元の方を見ながら桐乃はつぶやいた。 「兄貴に一番に考えて欲しいの。あたしといるときは他の女のことを考えてほしくないの。 でもあんたは黒猫のことを忘れられないみたいだからさ、せめて上書きしてやろうって思ったの」 「それが、あたしがここにあんたを誘った理由」 「・・・・・・」 そうか。だからお祭りなのか。 確かにおれはこのお祭りで何度も黒猫のことを考えた。そしてこれからは多分、一緒に桐乃のことを思い出すようになるんだろう。 俺は桐乃に歩み寄るとその頭をなでてやる。 「そうだな。俺はたぶん黒猫のことを忘れられない」 手の下で、桐乃の体が固まる。 「でもな、これからは浴衣を見たらおまえの姿だって思い出すし、射撃をしたらおまえの下手な腕前を思い出す。 たこ焼きを食うたびにおまえの顔が頭をちらつくし、月を見たら今のことを考えちまう」 桐乃の体から力が抜けるのがわかる。 「俺にとって桐乃が一番だからさ、きっと黒猫よりもお前のことを思い出す」 「―そっか」 桐乃はなでられるままとなる。 「ねぇ兄貴」 「なんだ?」 「あたしはね、ここであんたと別れて帰らなくちゃいけなかったの」 「だからなんでだよ」 「教えてあげない」 「言わないならそれでもいいけどさ」 どうせ俺じゃ理解できない理由なんだろうさ。 「それに、もう我慢できないし」 我慢?いったい何を言っているんだ? 「だからさ、 ごめん、黒猫。あたしあんたより1ページだけ先に行くから」 桐乃はそうつぶやくと、俺の手を払い顔を上げ、 俺の首に手を回した。 「桐乃っ!?」 一気に顔が高潮するのがわかる。 俺の視線の先では、桐乃が俺と同じく顔を朱に染めている。 「京介には黒猫のことばっか考える呪いがかかっているみたいだからさ、 あたしが―解呪してあげる」 桐乃の顔が近づいてくる。 やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい! これ以上近づかれると、今度はお前のことしか考えられなくなっちまうじゃねーか! さらに桐乃の顔が近づく。 桐乃の兄でも見とれてしまうような整った顔は現在目が瞑られており、俺も何故か目を瞑ってしまう。 そして― 満月の明かりの下、二つの影が重なる。 十秒か二十秒か、永久にも等しい時間が過ぎたあと、桐乃が離れる。 顔が熱い。思考がまとまらない。 「それじゃあ帰ろうか!」 くるりと桐乃は振り返ると、階段を駆け下りようとする。 「ちょ、ちょっと待て!」 俺は無意識のうちに桐乃の腕を掴み静止させる。 「なに?」 「まだ全然月を見てねぇじゃねーか。 少しぐらいさ、ゆっくりしていこうぜ」 ベンチに座りながら、今度こそ二人で中秋を照らす満月を眺める。 秋の始まりだと言うのに、体は熱く動悸は激しい。 でも何故か、心はしっとりと休まっている。 左肩に重みと暖かさを感じたが、そちらを見ずに月を眺める。 形容しがたい心の動きに突き動かされ、俺は桐乃の頭に手を置くと、ゆっくりと撫で始めた。 手を止めることなく、心の赴くままに髪を撫で付ける。 桐乃も俺のほうを見ずに、月を眺めているようだった。 しばらくして、俺は気になっていた事を尋ねた。 「なあ桐乃」 「なに?」 「おまえさ、手を払わないのか?」 「・・・・・・いい」 「なんでだよ」 「満月しか灯りがないからさ、別にいい」 「・・・・・・?」 よく分からんが、別に嫌いってわけじゃなかったんだな。 「あたしからもさ、ひとつ質問」 「なんだ?」 「あんたにも本物の彼女が出来たけどさ、やっぱり今でも妹も彼女も変わんないって思ってる?」 「・・・・・・そうだな、やっぱり『妹』も『彼女』もたいして変わんねぇよ」 「・・・・・・そっか」 「ああ。『彼女』と一緒にいると楽しいし、何考えてるか分かんねぇし、放っておきたくないし― やっぱり『妹』も『彼女』もたいして変わらねぇな」 「―なんだ、そうだったんだ」 「・・・・・・?」 俺の返事に何を納得したのか、肩への重みが増した。 「えへへ」 桐乃が嬉しそうに笑う。 ―まあ、喜んでくれるのなら何よりだ。 ずっと月を見ていると、ふと『誰か』の言葉を思い出した。 西洋では、満月と言うのは人の心を狂わせるものらしい。 今日ここでのやり取りは、もしかしたら満月のせいなのかもしれないな。 「ねぇ京介」 「なんだ、桐乃」 だからきっと 「あたし、京介のことが―」 「なぁ桐乃、今夜は―」 桐乃の言葉に割り込んだ俺が 『月が綺麗ですね』 こんなことを言ってしまったのは、月が俺を狂わせてしまったからだろう。 一拍の後、俺の言葉を聞いた桐乃は 「はぁ?」 頭の上に乗っていた俺の手を容赦なく払うと、俺に詰め寄った。 「あんたさ、人の言葉遮っておきながらもっとマシなこと言えないの? せめて月よりもおまえが綺麗だとか、 かぐや姫よりおまえのほうが素敵だとか!」 桐乃さん近づかないで下さい。顔を覗き込まないで下さい! 俺は桐乃から逃げるように顔をそらすと、勢いよく立ち上がり、置いておいた荷物を手に取った。 「うるせぇ! ほら、月も見たしもう帰るぞ!」 桐乃に手をつかまれる前に、俺はダッシュで階段へと向かった。 「ちょっと!待ちなさいよ!」 後ろから桐乃の声が聞こえたが、俺は無視して階段を下りていく。 今のこんな顔をおまえに見せられるわけねーだろうが! こうして、俺たちらしくない夜の祭りは終わった。 このやり取りで少しは桐乃のことが分かるようになった気がするし、桐乃とも仲良くなれたと思う。 ただそれと同じくらい、俺たちは分かってほしいことを分かってもらえず、伝えたいことを伝えられなかったんじゃないかって感じている。 まあそれも仕方がないだろう。俺たちはいつだって違う立場にいるし、違うものを見ている。 俺たちが互いを見るようになったのなんて一年半前からだし、兄妹のように接することが出来るようになったのはそれよりもずっと後だ。 前にも思ったはずだ。俺たちはまだまだ子供だし、分かり合うにはまだまだ時間が足りないってな。 間違いを繰り返しながら、それでも必死になってお互いを知る努力と、お互いを知ってもらう努力を続けていく。 もしかしたら、どこまで行っても平行線で、お互いに交わる場所なんてないのかもしれない。 それでも俺には俺なりに真っ直ぐと進み続けることしか出来ない。 なに、俺たちは兄妹で、時間なんてまだまだたくさんあるんだ。 交わることがなかったとしても、いつかそのすぐ隣を歩んでいくことぐらいはできるようになるだろうさ。 伝えたかった気持ちは、きっとそのとき伝わるだろう。 だからそう―今の俺たちは、すれ違うくらいでちょうどいい。 -END- -------------
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1783.html
京介「ったく。 赤城の奴、今日は泊まれるだとか言っておいてドタキャンしやがって……」 京介「おかげ様で俺は飯抜きに加えてこんな時間にこっそり家に入らねえといけない。 鍵持ってて良かったよ、ほんと」 京介「……ただいまーっと」 一応、挨拶はしておかないとな。 礼儀として。 良く親父に躾けられたもんだぜ。 京介「……真っ暗。 ってことは皆寝てるか」 難関は階段。 軋んで音が出るからな。 俺は恐る恐る、一段一段、慎重に……だけども、なるべく早く上る。 上り終えさえすれば、部屋はすぐ目の前だ。 後は朝早くに起きて、今帰ってきましたよって顔をすれば完璧ってわけよ。 へへ、我ながらナイスアイデア。 ガチャリ。 ……やべ! 親父か? それともお袋か? 桐乃「……ふわぁあ」 京介「き、桐乃?」 桐乃「……ひっ!」 大声を出しそうになった桐乃の口をすばやく押さえる。 さっきまで寝てたような顔をしているし、トイレにでも行くところだったのだろうか。 京介「……声出すな! 分かったら頷け。 手、離すから」 桐乃は目に少し涙を溜めつつも、一度頷く。 京介「……よし。 離すぞ」 桐乃「……なんで居るの、あんた」 桐乃もなんとなく状況を把握したのか、限りなく小さい声で俺にそう尋ねる。 京介「……いや、実はだな」 こうなってしまった経緯を説明。 途中、桐乃はそれを黙って聞いていた。 桐乃「なるほどね。 で、話は終わり? あんたに構ってる暇無いんだケド」 別に俺も構って欲しくは無いっての。 ……いや、ちょっと待て。 さっきまで暗闇に目が慣れてなくて見えなかったが、こいつの着ている服って。 京介「……それ、俺の寝巻きじゃね?」 俺が言うと、桐乃はびくっと体を反応させる。 あれ……。 マジで図星だった……とか? 桐乃「そ、そんなワケ無いでしょ。 意味わかんないこと言わないで」 京介「でもお前そんなの持って無いだろ」 桐乃「こ、これは……! これは、買ったの。 今日」 京介「その割にはくたびれてる感じがするが……」 桐乃「……それは! め、めちゃくちゃ動いたから。 チョー動いた」 京介「……寝巻きで?」 桐乃「……寝巻きで」 顔が明らかに引き攣ってる。 怪しさで表すと覆面を被った奴が銀行に入ってきたくらいの度合いで怪しい。 京介「やっぱりそれ、俺のだろ」 桐乃「……だ、だから違うっての! 大体、なんであたしがあんたの寝巻きを着ないといけないの? 頭おかしいんじゃない?」 知るかよ。 その理由が知りたいのは俺だってのに。 京介「……他に服が無かったとか?」 桐乃はその言葉を聞くと、ぱっと表情を変える。 まるで思いついたかの様な顔。 桐乃「そ、そう! 他に着る服が無かったの! だから嫌々……本当にキモいんだけど、気付いたときはお父さんもお母さんも寝てたし、それでたまたま……本当にたまたま、あんたのがあったから借りてたってだけだから」 さっきと言ってること違げえし! お前、頑なに着てないって言ってたじゃん! 京介「……分かった分かった。 とりあえずそれ、明日戻しとけよ。 俺もう寝るから」 桐乃「……そのまま返せって言ってんの!? あ、あんたどうせ……シスコンだから、あたしの匂いが付いたの嗅ぐつもりでしょ」 京介「んなことしねえよ……。 どんな発想だっての」 桐乃「あーキモいキモい。 シスコン」 京介「もうそれでいいや。 じゃあ洗ってからでも良いから、お袋に洗ってもらっといてくれ。 じゃあな」 俺は桐乃にそう告げ、部屋に入る。 借りてるなら借りてると最初からそう言えば良い物を。 俺だって、そんなことで一々怒ったりしないっつうのに。 終わり ----
https://w.atwiki.jp/kiririn/pages/1210.html
406 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/10/16(日) 22 00 14.67 ID 8MfrO7eP0 [1/4] 401 桐乃「ねえ、デリヘル呼んでよ」 京介「げ……今度の小説もまたそんなシーンがあるのかよ……」 桐乃「ほら、この電話番号だからさ」ヒョイ 京介「おまえがいるのに呼ぶはずねえだろうが…… って、この番号……」 桐乃「……電話してくれる?」 京介「……仕方ねえな」ピピピ ソンナーヤサーシークシナイデ 桐乃「はい、デリヘル『妹空』です!」 京介「え、えっと……おススメの娘とかいる?」 桐乃「今なら一番人気の『桐乃』ちゃんがおススメです」 京介「じゃあ、その娘で」 桐乃「コースは『ギュッとして朝までラブラブするだけの簡単なお仕事』コースだけですけど、 よろしいでしょうか?」 京介「あ、ああ」 桐乃「ご注文承りました。 御代は『これから人生、ずっとずっと一緒にいること』、 キャンセルはできないから覚悟してよね、京介♪」 -------------